かながわでにほんご Study Japanese in Kanagawa

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2021.09.12 オンラインフォーラム開催報告

かながわ地域日本語教育フォーラムを開催しました。
テーマ:地域日本語教育に多様な担い手が関わるためには

神奈川県は、多文化共生の地域社会づくりの一環として、地域日本語教育の総合的な体制づくりを進めています。
かながわの今後の地域日本語教育を皆様と一緒に考える機会となるようフォーラムを開催しました。
パネルディスカッションでは、青少年から大人まで幅広い世代や、多様な分野の人材が関わりやすい日本語教室づくりなどについてのお話も伺いました。

開催概要
日時
令和3年9月12日(日曜日) 14時から15時40分
開催方法
「ZOOM」によるオンライン開催
参加者数
226名
神奈川県内外の地域日本語教室ボランティアの方、これから関わりたい方、日本語学校教職員、自治体・NPO職員、高校生・大学生など
進行
山内 涼子((公財)かながわ国際交流財団/地域日本語教育総括コーディネーター)
プログラム
(1) 神奈川県の取組紹介(神奈川県)

(2) 基調講演
「地域日本語教育に多様な担い手が関わるためには」
講師:明治学院大学 教養教育センター 准教授 長谷部 美佳氏

(3) 事例発表
「さぽうと21学習支援室の取組」
講師:社会福祉法人さぽうと21 学習支援室チーフコーディネーター 矢崎 理恵氏

(4) パネルディスカッション
・長谷部 美佳氏(明治学院大学 教養教育センター 准教授)
・矢崎 理恵氏(社会福祉法人さぽうと21 学習支援室チーフコーディネーター)
・藤浪 海氏(関東学院大学社会学部・専任講師、NPO法人ABCジャパン・アドバイザー)
プログラム詳細

※発表資料はクリックすると開きます。

(1) 神奈川県の取組紹介(神奈川県)

神奈川県の地域日本語教育の取組について、コーディネーターの配置や県モデル事業として実施している専門家による日本語講座、市町村支援として実施している日本語ボランティアの養成・研修、財政的支援のほか、日本語学習支援に係る相談対応・情報提供等の紹介をしました。

(2) 基調講演

「地域日本語教育に多様な担い手が関わるためには」
講師:明治学院大学 教養教育センター 准教授 長谷部 美佳氏
地域日本語教育を多文化共生の視点から見ると、地域の日本語教室は、外国籍の住民にとって、日本語を学ぶ場所というだけでなく、日本人とつながれる場所、日本人と出会える場所、自分たちが暮らしていることを認めてもらえるような承認の場としての機能が大きいというお話がありました。
また、地域の日本語教室をボランティア(40代~70代)が支えている現状と、学生のボランティア活動に対する意識や関わり方についてもお話をしていただきました。

(3) 事例発表

「さぽうと21学習支援室の取組」
講師:社会福祉法人さぽうと21 学習支援室チーフコーディネーター 矢崎 理恵氏
日本に暮らしている難民を中心に自立支援の活動を続ける「社会福祉法人さぽうと21」の多様な担い手がかかわる学習支援の取組について発表をしていただきました。
「さぽうと21」では、「一人も取り残さない」ために活動を見直し、工夫しながら展開されています。活動や学習をしている誰もが安心して力を発揮できる場であること、そしていろいろな人がつながること、そうしたことの大切さについてお話をしていただきました。

(4) パネルディスカッション

学生時代から日本語学習支援のボランティア活動の経験がある藤浪氏から、ボランティアを始めたきっかけと、活動を通じて気付いたことについて発表をしていただきました。
発表後は、参加者からの質問も交えながら、幅広い世代にとって活動しやすい教室や魅力ある仕掛け等について意見を交換しました。
パネリストからは、「大学のボランティアセンターとのつながりづくりと活用」、「小さなことからでよい。料理教室やフルーツバスケットといった楽しい活動の積み重ね」といった意見が出されました。

最後に、各パネリストから参加者へ次のメッセージをいただきました。

「学生のみなさんはぜひ勇気をもって連絡を入れてみてください。もう参加しているという方は、まわりの人に活動を紹介してあげてください。参加者の一人ひとりの行動が輪を広げていくことになればよい。」(藤浪氏)
「参加する人々がお互いをリスペクトし、承認しあい、感謝の気持ちを言葉に出していけるとよい。いろいろな方が増えてきたことでおもしろい場所を作っていける。大人も大学生も同じ。そこが楽しい場、おもしろい場であると思えることで、モチベーションを維持していける。」(矢崎氏)
「重要なのは、日本語教室が外国籍の方にとってだけでなく、学生にとってもボランティアにとっても居場所であるということ。ここで日本語を教えているということが承認欲求にもこたえられていると思う。若い人も活動を継続できる仕掛けを工夫できるとよい。」(長谷部氏)

■ 参加者の声

参加者の皆さまの声を、一部ですがご紹介します。

  • ボランティア活動は、支援団体側にとっても学生側にとっても、双方向に良い影響があるということをお話いただいてよかったです。どんなジャンルもそうですが、ボランティア活動のコーディネートってとても難しいですが、学生のうちから、ボランティアの体験があるというのはとてもいいことなのではないかと思っています。
  • 地域日本語教室が、ボランティア支援者、外国人学習者双方にとっての「承認の場」であり、大切な居場所であることを再確認することができました。また、学生(若い方々)にもっと関わってもらう、という発想自体がほとんどなかったので、次世代を担うという意味からも、「今取り組まなくてどうする」の一つであることを学びました。
  • ボランティアの若返りは共通課題です。⼤学⽣側からみるとハードルを⾼く感じてしまったり、難しそうな活動だという印象を抱くのかもしれない、と⾒直しの必要性を認識させられました。学習者同様、ボランティア側にも「継続参加」を期待するためには、やはり「楽しい」という要素が必要だと感じました。今の地域⽇本語教育が抱える課題をタイムリーに反映させていたフォーラムだったと思います。
  • ⼤学⽣ボランティアの当事者としての経験を聞けたことが⼤変有意義でした。学習者だけでなく、活動に関わる全ての⼈が、様々な背景を抱えている。活動や居場所をつくる側は、そのことをしっかりと肝に命じなければ、と⾃戒の意味で強く思いました。
  • やらなければならない義務も何もないボランティア活動をしようとすること⾃体、社会⼈でも、ある種、特別な決意が必要なのかもしれません。でもそれをあまり堅苦しく考えず、まずはやってみようと思えるきっかけは⼤切ですね。さらに、つながったものを、つなぎ⽌めるのは、結局のところ⼈なのかなと思いました。そこで得られる「居⼼地のよさ」「有⽤感」が、ボランティアや学習者を、その場へつなぎ続けると思いますし、そうした雰囲気を醸成していくのにも、「コーディネーター」が⼀役買うことは多いのではないかと感じました。それぞれの事情や気持ちをゆるやかに受け⽌め合える居⼼地の良い場が、⽇本中に増えていくといいと思います。