かながわ地域日本語教育フォーラムを開催しました。
テーマ:日本語学習の支援を通して外国人が働きやすい職場を考える
神奈川県では多文化共生をめざし、地域日本語教育の取組を進めています。外国人が「働きやすい職場」について、日本語教育を通じた企業や行政、地域とのつながりを考える機会となるようフォーラムを開催しました。
パネルディスカッションでは、外国人支援、企業、日本語講師、日本語教育専門家など様々な立場から意見を伺い、考えを深めました。
- 日時
- 令和4(2022)年1月23日(日) 14時から16時
- 開催方法
- 「ZOOM」によるオンライン開催
- 参加者数
- 115名
- 神奈川県内外の地域日本語教室ボランティアの方、日本語学校教職員、自治体・国際交流協会・NPO職員など
- 進行
- 藤分治紀(公財)かながわ国際交流財団/地域日本語教育コーディネーター
- プログラム
- <事例発表>
(1)「商工会議所が専門学校と連携して実施する企業の日本語支援」
・横須賀商工会議所 総務渉外課 荻原美香氏
・学校法人情報文化学園アーツカレッジヨコハマ 教育推進室 日本語学科 講師 宮下泉美氏
(2)「産業界と連携した横浜市の日本語教育の取組」
・(公財)横浜市国際交流協会(YOKE) 多文化共生推進課 門美由紀氏
・(公財)横浜企業経営支援財団(IDEC) 経営支援部 国際ビジネス支援担当 高山現人氏
<パネルディスカッション>
「日本語教育における県内の労働分野での取組や課題、それぞれの役割」
・神吉宇一氏(武蔵野大学グローバル学部准教授/かながわ国際政策推進懇話会専門委員会(地域日本語教育)委員)
・荻原美香氏(横須賀商工会議所 総務渉外課)
・宮下泉美氏(学校法人情報文化学園アーツカレッジヨコハマ 教育推進室 日本語学科 講師)
・門美由紀氏((公財)横浜市国際交流協会 多文化共生推進課)
・高山現人氏((公財)横浜企業経営支援財団 経営支援部 国際ビジネス支援担当)
※発表資料はクリックすると開きます。
<事例発表>
(1)「商工会議所が専門学校と連携して実施する企業の日本語支援」
発表者:横須賀商工会議所 総務渉外課 荻原美香氏
学校法人情報文化学園アーツカレッジヨコハマ 教育推進室 日本語学科 講師 宮下泉美氏
地域企業向けに開催した「外国人労働者の日本語コミュニケーション講座」の企画から実施までをご報告いただきました。講座開催にあたり、地域企業を訪問してニーズ把握に努め、運営のパートナーとして他事業で連携実績のある専門学校を選定するなど、事業を丁寧に作り上げていく過程についてもお話しいただきました。外国人従業員の勤務中に講座を実施したことで、日本人従業員がコミュニケーションを取る機会が多くなったこと、自分で勉強する方法を伝えて継続して日本語を学べるようにしたことなど、講座のねらいと成果についてもお話しくださいました。
(2)「産業界と連携した横浜市の日本語教育の取組」
発表者:(公財)横浜市国際交流協会 多文化共生推進課 門美由紀氏
(公財)横浜企業経営支援財団 経営支援部 国際ビジネス支援担当 高山現人氏
外国人従業員向けの日本語教室、日本人従業員向けの「やさしい日本語」講座、異文化間コミュニケーション講座を企画した経緯をご報告いただきました。講座企画に際し、(公財)横浜企業経営支援財団(IDEC)の協力を得て行った実態調査から、企業側は外国人従業員に対して「長く働いて欲しい」「将来的には中核社員になってほしい」と考えていることが分かり、地域の外国人支援団体と企業支援団体がそれぞれの強みを活かして連携したことにより、企業の要望に応える講座を開催することができたことなどについてもお話しくださいました。
<パネルディスカッション>
はじめに神吉宇一氏より、かながわ国際政策推進懇話会専門委員会(地域日本語教育)で議論された内容についてご報告いただきました。
日本語教育の推進に関する法律の中で地域日本語教育が連携を図る分野として「労働分野」が挙げられています。企業として果たすべき社会的役割、企業と地域の役割分担をどのように考えていくべきかといったことなどが専門委員会において議論されたとご報告いただきました。
かながわ国際政策推進懇話会専門委員会(地域日本語教育)報告書
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/64402/houkokusho.pdf
ディスカッションでは「働きやすい職場」について話し合いました。「働きやすい職場」となるには日本人であっても外国人であっても変わりはなく、達成感を感じられ、お互いを認め合えること、キャリアプランを考えられること、さらに、従業員に対する評価が平等で公平であることなどが見える形で保たれていることが大事であるとの意見がありました。また、従業員同士がコミュニケーションを取る上で、仕事に必要なフォーマルなやり取りだけでなく、インフォーマルなやり取りも発生する職場であることが大切ではないかという意見もありました。
最後にパネリストからフォーラムの感想をいただきました
「今取り組んでいることが100%だとは思っていない。すべての方のニーズに対応することは難しいが、できることを少しずつ広げていければいいと感じている。みなさんからの報告にもあったようにコミュニケーションをどのように取っていくといいのかということを、日本人(従業員)にも話す機会を設けたい。」(荻原氏)
「2年間試行錯誤しながら作り上げてきた日本語講座を振り返る機会となった。このようなフォーラムで取り上げてもらうことにより、多文化共生の実現に向けて私たちが取り組む課題を再認識することができた。今後も円滑なコミュニケーションが取れる職場、お互いの価値観を尊重できる職場が一つでも増えるように支援していきたい。会社が集まれば地域になり、地域が増えればそれが社会になる。今後も私たちの取組をさらに充実させるために努力していきたい。」(宮下氏)
「今日の報告で共有したことを活かし、今後も頑張って取り組んでいきたい。今回は就労という場面を取り上げたが、(公財)横浜市国際交流協会(YOKE)では就労のための日本語以外にも様々プログラムを作っている。今後も業界団体や企業、地域の日本語教室、国際交流ラウンジなど多くの方々との対話を通じて、よりよいプログラムを作り上げていきたい。」(門氏)
「(公財)横浜企業経営支援財団(IDEC)には企業支援という使命がある。今日の報告を受けて企業の意識を変えていく必要があると改めて強く感じた。IDECの支援事業(人材育成計画や人事評価、経営相談)を通じて変えられればよいと思う。企業にとって同業他社の動きはとても関心が高いので、経営者の気づきになるよう、働きかけていきたい。」(高山氏)
「日本語学習の動画で学習者がとても楽しそうに学んでいる様子が印象的だった。学ぶことによって、学習者のできることが増えていく、そこから感じられる“楽しさ”が大切にされる必要があると思う。
今日の報告にあった取組は前例がなく、報告者のみなさんはご苦労が多いと思うが、今後、外国人が増えていく中でこのような取組は広がっていかなければならない。外国人を受け入れ、どのような社会にしていくか、そうしたことを地域社会も考え、学んでいく必要があると思う。」(神吉氏)
■ 参加者の声
参加者の皆さまの声を、一部ですがご紹介します。
- 皆さんとてもご苦労をされているということでしたが、同じ方向を向いている人たちが少しずつ輪を広げてそれぞれの情報や強みを生かし、垣根なく協力していくことが今後の外国人就労者が働きやすい職場、生活しやすい環境を作っていけるのだ、と感じました。
- 外国人と日本人が、日常生活において、また仕事の現場において、平等であることが基本である環境づくりをしていかなければならないと思いました。
日本の企業も、学校も、一般の人も、共生社会について学び、変わっていかなければならないと思います。 - 企業での日本語支援に、現在取り組んでいる団体の考え、思いを知ることができた。
- まわりとコミュニケーションが取れるための基礎的な日本語力、学習の仕方が学べること、本人の自信といったことが、大切だと改めて感じました。
- 今回のフォーラムで実際にどのような仕組みで従業員への日本語教育が行われているのか、中小企業のおかれている状況の報告、皆さんの試行錯誤し模索しながらより良い仕組み作りを目指していらっしゃる姿を拝見し、ぼんやりしか分かっていなかったことが少し見えてきた気がします。