マルパ講演会&研修会「ユニバーサル・ミュージアムとは何か―触文化論に基づく展示・教育普及事業」(平成30年3月21日)を実施しました!
平成30年3月21日(水・祝)、神奈川県立近代美術館葉山館において国立民族学博物館(民博)准教授の広瀬浩二郎さんを講師に迎え、マルパ講演会&研修会を実施しました。広瀬さんは13歳の時、完全に視力を失い、盲学校から京都大学に進学、博士号を取得されました。その後、民博の研究者として元々のご専門である日本宗教史に加え、触って感じ、考える「触文化論」を専門とされ、視覚偏重の社会を問い直し、すべての人が(手や全身で)「さわる」ことによってミュージアムの展示品の奥深さ・豊かさを楽しむ「ユニバーサル・ミュージアム」を提唱されています。
当日は講演会前に、開催中の企画展「白寿記念 堀文子展」や館内展示の作品について、水沢館長から広瀬さんに対してギャラリートークをしていただきました。絵画の一点一点についての言葉を尽くした解説が、作品のありようを彷彿とさせたとのことで、広瀬さんは大変満足された様子でした。
講演会・研修会において、広瀬さんはご自身の民博における長年の経験から、展示物にはさわらないとわからないこと、さわると(質感等が)より深くわかることがあり、国宝のレプリカをさわることで「見識」ではなく「触識」が得られると説明されました。
広瀬さんが監修された、2016年度に兵庫県立美術館の特別展「つなぐ、つつむ、つかむ」は、来場者がアイマスクをして会場に展示された3体の作品を、手や全身でさわり、作品そのものは見ないという「無視覚流鑑賞」の展覧会でした。広瀬さんによれば、この新しい「鑑賞法」は、作者の制作への思いを「追体験」できるのではなく、「追制作」した感覚が得られるとのことです。
また、こうした、視覚優位ではない新しい「鑑賞法」によって、これまでの、誰かのためのサービスという一方向的な“for”の発想から、障がい者を含む多様な方々からのアプローチをマジョリティ側に取り込むという、“from”の発想が生まれ、それがミュージアムから発することのできる「合理的な配慮」となるとも話されていました。
講演会当日はあいにく雪に見舞われましたが、参加された方々からは熱心な質問などがあり、充実した講演会となりました。