かながわ国際交流財団 設立40周年

2017年、神奈川国際交流財団は
設立40周年を迎えました。
1977年〜2017年までの年表と、
主要な事業を紹介する連載記事をご覧ください。

かながわ国際交流財団 設立40周年

かながわ国際交流財団 40年のあゆみ(連載記事)

1977年の設立以来、2017年で40周年を迎えたかながわ国際交流財団(KIF)。
どんな時代状況の中で、どのような活動を行ってきたのでしょうか。
主な事業をご紹介しながら振り返り、将来を展望したいと思います。

KIFの歴史は、多くの方のご協力で進められてきました。長期間、多岐にわたる事業の中で、現在のスタッフには見えないことも多いと思います。

当時の様子についてのコメントや、お気づきの点などありましたら、ぜひ当財団へご連絡ください。

※一部のスマートフォンでは、文字が正しく表示されないことがありますので、その場合にはPCで閲覧していただくようお願いします。

第15回 地域社会の未来を、外国人住民とともに ~多文化ソーシャルワークから子育て支援事業へ~

2017年2⽉に40周年を迎えたかながわ国際交流財団(KIF)。⽇本で最初に設⽴された地域国際化協会です。設⽴以来40年間の活動をふりかえる連載は、今回が最終回です。
今回は、外国につながる⼦ども・若者⽀援事業の中で、近年の重点事業である「外国⼈住⺠の⼦育て⽀援」と、そこに⾄るプロセスをご紹介します。
※画像はクリックすると拡⼤します。⼈物の肩書は当時のものです。

外国人住民の定住化が進み、日本で出産・子育てする人も増えてきました。2017年の人口動態統計によると、日本で生まれる赤ちゃんの27人に1人、神奈川県で生まれる赤ちゃんの20人に1人は両親どちらかが外国籍の、「外国につながる赤ちゃん」です。



KIFでは近年、保健や福祉面での外国人住民に対する子育て支援に力を入れています。今回は、「外国人住民子育て支援事業」開始に至る経緯や、日本で戸惑いながら子育てする外国人保護者へのサポート、支援者に対する働きかけなどの展開についてご紹介します。



●子ども支援の中から見えてきた課題

この連載の第14回でもご紹介したとおり、神奈川県内では外国につながる子どもたちの学習支援教室などの活動が盛んに行われ、KIFもそのような団体と連携しつつ、調査の実施、冊子の発行、フォーラムの開催などを行ってきました。神奈川県内の公立小中学校では、国際教室や日本語指導協力者など、日本語・教科指導の仕組みが定着しています。また公立高校受検には特別な制度があるなど他県と比べて充実しています。

しかし、教育面での課題の背景にある家庭環境や経済状況、異なる文化や価値観に対する理解は、課題として長く指摘されながら、具体的な取組みは現在でも十分には進んでいません。学齢期の問題を未然に防ぐためには、小学校入学前からの早期介入が必要といわれ、KIFとしても方向性を模索する時期が長く続きました。



●多文化と福祉をつなぐ(多文化ソーシャルワーク講座)

2000年代に入り、多様化・複雑化する外国人住民の課題に総合的に取り組む支援として、「多文化ソーシャルワーク」という考え方が広がりました。日本で最初にこの言葉が使われたのは、2006年に愛知県で始まった多文化ソーシャルワークを担う人材の養成・活用事業です。その後間もなく、神奈川県が設置した「NGOかながわ国際協力会議」において「外国籍県民の相談役・多文化共生の推進役となる人材(多文化ソーシャルワーカー)の育成の必要性」が提言され、神奈川県の主催事業として2008年度から「多文化ソーシャルワーク講座」が始まりました。この講座開始時に、KIFは県からの委託によりニーズ調査を行ない、講座に盛り込むべきテーマや視点についての整理を行いました。また、2012年度からは講座の企画・運営を受託しました。

この講座では、外国人支援に関わる人々を対象に、ソーシャルワーク(相談援助)の知識や技術、また医療、労働、教育、家族に関する外国人ケースにどのように対応するか、そして多くの外国人当事者にも講師として参加してもらい、様々な経験を直接聴くことを通じて、異なる文化や言語の中で生きる外国人住民の困難についても学びました。外国につながる子どもの教育に関わる支援者が多数参加しましたが、子どもを日本語や教科の指導の対象として捉えるだけではなく、一人一人の家庭環境を理解し関わっていく大切さ、また子どもだけではなく家族をユニットとして支え、子どもが安心して成長できる環境を整える大切さに気づく機会にもなりました。

多文化ソーシャルワーク講座は2016年度まで毎年開講されましたが、最後の2年間は「外国につながる子どもと家族を支えるために」というテーマを掲げました。次世代を担う子どもたちを支えるためには、学習支援だけでなく、ソーシャルワーク的な関わりが必要であり、家族全体を支える支援が大切であることを視野に入れたプログラムを実施し、その後の子ども支援をめぐる事業展開にもつながりました。

また、自治体等による外国人住民への対応は、「外国人相談窓口の設置」が中心でしたが、多言語であっても電話などの口頭による相談だけでは、問題解決につなげることは難しく、福祉、医療などの専門職や専門機関との連携が不可欠であることが分かってきました。

ソーシャルワークの分野では様々な知識や技術・ノウハウが蓄積され、専門性が確立されていますが、ボランティアとして外国人支援に関わってきた人々が、それらの情報や蓄積に触れる機会はほとんどありませんでした。外国人住民の存在が地域社会の中で大きくなっていくにつれて、福祉/ソーシャルワークと多文化をつなぐ必要性について認識が深まり、福祉などの専門家の側からも外国人住民支援についてのノウハウを学ぶ必要があるという切実な声が上がるようになりました。



多⽂化ソーシャルワーク講座


●“不就学・不登校”の子どもたちとの出会いから
(文科省・定住外国人の子どもの就学支援事業)


2008年末、リーマンショックによる世界規模の経済危機が発生しました。その影響は、日本で働く外国人住民にも及び、職を失う人、やむなく帰国する人が相次ぎました。定住志向の人々の中でも家庭状況の急変により学校に通えない子どもたちが増えていることが明らかになり、政府による帰国支援事業が国際的に批判を浴び、国内の支援策を求められたことも背景にあって、文部科学省により「定住外国人の子どもの就学支援事業」が開始されました。KIFはこの事業を受託し、平塚市内の外国人集住地域で事業を展開することとなりました。

事業の主旨は、不就学・不登校状態の子どもを学校につなぐため、地域に日本語指導や教科指導を行う教室を設置し、学校と連携しながら就学支援を行うことでした。主な対象は、何らかの事情で学校に通っていない小中学生を想定していましたが、徐々に、保育園などに通わず、家庭で母語を使って生活し、小学校に入学して初めて集団生活や日本語を使うことになる子どもたちを心配する声が寄せられるようになりました。そのため、教室では当初の計画に追加し、市内の保育園等の協力を得て小学校入学に向けた日本語指導を行い、小学校就学までのサポートするようになりました。また、小学校での就学時健診、入学説明会などに関わる中で、保護者が抱えている不安や実情に触れることになりました。

この事業が多文化ソーシャルワーク講座の実施時期と重なったこともあり、KIFとしては子育て世代の家族支援の重要性について、さらに認識を深めることとなりました。



就学前⽀援教室

就学前教室を経験した
⼦どもの⼩学校⼊学


●文科省事業を発展 (多文化子育てサポート モデル事業)

文科省の不就学・不登校対策事業は2012年度で終了となりましたが、その後KIFは、引き続き平塚市内で、家族支援のあり方を探る「モデル事業」を実施しました。外国につながる子どもが多く在籍する保育園に「多文化子育てサポート窓口」を設置し、スペイン語とカンボジア語の「多文化サポーター」が子育て相談に対応するとともに、地域でのつながりや協力者とのネットワーク(小中高、教育委員会、保育園、自治会、学習支援活動団体、福祉村、自治体関連部署等)を活かし、学校内での支援や宿題教室などを行いました。また、子どもの数が多い家庭が多く、妹・弟たちの存在も視野に入ってきたため、在籍する保育園などと協力して未就学児の支援へと対象の範囲を広げました。 

2013年度末には、モデル事業の締めくくりとしてフォーラム「多文化共生の地域づくり~外国人集住地域の実践から~」を開催しました。また、自治体職員向けのパンフレット「外国人住民サポートアイディア集」を発行しました。



多⽂化サポーターによる⼦育て相談

保健師によるレクチャー


●就学前支援に注目した子育て支援事業の始動

日本生まれの外国につながる子どもが増えていますが、保護者が日本での子育てに関する知識や情報を得る機会は限られています。特に結婚を機に来日する女性は、日本語を学ぶことなく出産・子育てが始まってしまい、戸惑い、孤立してしまうこともあります。保育園に入る手続きができず、子どもが幼児期の集団生活を経ずに小学校に入学し、学校生活に適応するのが難しくなるなど、様々な課題があります。

そうした状況の中KIFでは、平塚市内でのモデル事業や、外国につながる家族の動向、県内外での取り組み()を参考に、2014年度に就学前の子どもと保護者の支援に着目した「外国人住民子育て支援事業」を立ち上げることとし、引き続き平塚市内の保育園の協力を得て「多文化子育てサポート窓口」を継続しながら、子育てを支えるメニューの検討を行いました。

その中で行った事業のひとつが、外国出身の保護者と保育士との交流会です。ことばの問題で双方の意思疎通が取れないだけでなく、お互いに不安を感じているとわかったことから実施しました。保護者が用意してくれた母国の料理を食べながら、サポーターの通訳で子どもの様子や文化・価値観の違いなどをざっくばらんに話しあったことで、保護者と保育士の距離がグッと縮まる機会となりました。保育園は子どもが長い時間過ごし、保護者もお迎えで毎日足を運ぶ場所です。そこで相互理解に基づいた関係が築かれることにより、安心して子育てをするきっかけになると実感しました。

保育士の側も、外国の文化や習慣を理解したいという思いを持っていることも分かり、平塚市内の保育園に勤務する保育士を対象に、外国につながる子ども・家族の背景を理解する研修も実施しました。さらに母子保健へ視野を拡げ、平塚市の母子保健担当部署と連携し、保健師や助産師、栄養士が外国人保護者と関わる場面での通訳の試行も行いました。市町村の保健師は、外国につながる親子と日常的に接点があり、コミュニケーションに試行錯誤していることも知ることができました。



カンボジア人保護者と保育士の交流会


●外国人住民への子育て支援に関わる調査

ここまでご紹介した平塚市での取組みから、子育て支援の分野における外国人支援のニーズが見えてきました。そこで、2015年度は神奈川県全域での事業展開の可能性を探るため、「外国人住民への子育て支援に関わる調査」として、「母子保健」、「保育」、「子育て支援」を担う県内市区町村の担当部署を対象としたアンケート調査を行いました。これにあわせ、先進的な取り組みを行っている自治体や機関、子育て中の外国人保護者へのヒヤリング調査を行いました。

調査の結果、母子保健を担う部署では、外国人住民が少ない自治体でも「情報が届かない」「コミュニケーションが取れない」などの課題に直面していることがわかりました。保健師、助産師などの担当職員は、母子保健法や児童福祉法に基づき、「母子手帳交付」や「乳児家庭全戸訪問」「乳幼児健診」など住民との対面・説明などが必須であるため、外国人住民のために利用できる多言語のツールがない中で、様々な努力が重ねているという状況が明らかになりました。

保育に関しては、入園等の相談や申請手続きに対応する行政窓口担当者が調査対象であったため、外国人住民との接点は限定的であることが伺われました。一方、ヒヤリング調査から、入園後の持ち物や体調管理、行事のお知らせなど、日々のやり取りを伝えるニーズが高いことが明らかになりました。

公的な子育て支援センターでは、残念ながら外国人親子の利用が多くないためか、アンケート調査では、対応に苦労しているという声はあまり聞かれませんでした。しかし、ヒヤリング調査では、外国人親子も、地域の中で子どもを遊ばせ、子育てについて相談できる場がほしいとの声があがりました。



外国⼈住⺠への⼦育て⽀援に関わる調査報告書
(画像をクリックするとダウンロードできます)


●調査から見えてきた子育て支援のニーズ

「外国人住民への子育て支援に関わる調査」から明らかになった課題をまとめると、以下のようになります。


①支援の現場での言語的コミュニケーションの不足
言語の壁により必要な情報やサービスが届いていないことが最大の課題として認識されている。また、多言語対応において地域間で差がある。

②外国人住民の情報や資源へのアクセスの困難性
利用できる制度や資源の存在を知らず、子育てにあたって必要な支援を活用できない外国人住民がおり、それが時として深刻な孤立を生む場合もある。

③子育て支援関係者の学習ニーズへの対応
保健師、保育士等、子育て支援関係者の側にも、外国人住民の母国の文化や制度について理解したいというニーズがあり、学ぶ機会を求めている。


調査結果を踏まえ、KIFは外国人子育て支援事業を以下の4つをポイントで進める展望を得ました。


①県域での多言語対応の充実
②外国人住民への確かな情報伝達と支援
③行政、外国人支援団体、外国人コミュニティの連携の促進
④子育て支援関係者への学習機会の提供・支援者間ネットワークの構築



●多言語による公的サービスと子育て支援関係者をつなぐ

神奈川県内には、自治体などによる外国語での情報提供や相談窓口、通訳派遣などの制度がありますが、子育て支援関係者には、制度の存在すら知られておらず、利用の仕方や利用によるメリットを伝えていく必要があることも明らかになりました。

そこで2016~2017年度は、子育て分野での通訳派遣の試行を行いました。新生児訪問や乳幼児健診、家庭訪問、保育園・幼稚園の入園手続き、保育士との面談など様々な分野で、95件の通訳派遣を行いました。通訳が入ることで正確に情報が伝わり、支援者にとっても外国人保護者にとっても不安が解消され、質問や投げかけに確実な回答を得ることができるかを実感してもらう機会となりました。

通訳派遣は、神奈川県の「かながわ一般通訳支援事業」により行われましたが、試行終了後は、独自に予算を確保した自治体が複数あり、引き続き通訳を活用できる流れを作ることができました。



●子育て分野における確かな情報伝達と支援

子育て分野に特化した多言語資料は、全国的にも限られており、現場の声を聞きながら、必要情報の多言語化を手探りで進めていきました。

調査に先立ち、既に2014年度に多言語版「予防接種のしおり」を作成していましたが、予防接種の接種項目は頻繁に変更され、専門機関による正確な情報提供が必要であることが分かりました。そこでKIFでは、汎用性の高い内容を確実に届ける方法を探っていくことにしました。

「外国につながる親子のための入園のしおり」(2014年度)では、保育園名や開園時間など、個別に異なる情報は使う人が記入できるよう工夫をして9言語を作成、公開しました。また、「『新生児訪問及び赤ちゃん訪問』訪問員用コミュニケーションツール」(2015年度)は、家庭訪問を担う保健師・助産師などが、資料の該当箇所を指さしながら外国人の母親に、子どもや母体の様子を尋ねるための問診票などを多言語化しました。これらの多言語資料をWEB上で公開すると全国から反響があり、改めて、多言語資料を充実させるニーズが高いことを再認識しました。

□子育てチャート 作成と普及の工夫

2016年度には「外国人住民のための子育てチャート」を6言語で作成しました。「子育てチャート」とは、妊娠・出産から小学校入学に至るまでの関係機関や必要な手続きについて、すごろく形式で分かりやすく示したものです。

外国人住民が日本の制度を理解し、活用するためには、日本語の情報をそのまま外国語に置き換えて多言語化するだけではなく、外国人には分かりづらい、日本社会の制度や背景を補足して伝え、手に取りやすい装丁とするなどの工夫が必要です。

作成にあたっては、子育て経験のある外国人住民への聞き取りをきめ細かく行い、またイラストを多用し、言語別に色分けして長期間活用してもらえるよう作成しました。初版の発行後も、利用者の声を聴きながら言語数を増やし、さらに伝わりやすい表現に変えるなど改良を重ね、2017年度には、居住者数・出産数ともに増えているネパール語版を加えて全7言語としました。また2018年度には、出産予定日や乳幼児健診、予防接種などの日程を自分で記入する「産前・産後活用シート」を作成し、医療機関に症状を伝える「多言語医療問診票」なども加え「子育て応援リーフレット」へと改訂しました。

この汎用性の高いリーフレットを、外国人住民の手に確実に届けるために、県内市町村の関連部署との連携にも力を入れました。外国人住民が妊娠後初めて役所に足を運ぶのは母子手帳交付時です。母子保健法により、母子手帳は妊婦との面談を行った上で交付することになっており、この面談を行う際に日本の諸制度に不慣れな外国人妊婦に対して「リーフレット」を直接手渡しし、概要を説明するよう担当の保健師や助産師に依頼しています。地域によって、外国人住民の出身国や言語が異なるため、需要を把握しながら計画的に配布し、効果的に活用してもらえるように工夫しています。

□発信媒体の工夫(動画による発信)

印刷物以外の媒体による発信も効果的ではないか、というアイディアから、2017年度には、一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)の助成を受け、動画「外国人住民のための日本の子育てシリーズ」を作成しました。

動画のテーマとして、「全体の流れ」とともに、重要でありながら外国人住民には馴染みがなく、分かりにくい「母子手帳交付」や「母子訪問」を取り上げ、7言語の字幕をつけたDVDを作成しました。外国人住民や自治体担当部署の協力を得て、撮影を行っています。外国人住民が行政窓口に訪れた際に視聴してもらうほか、YouTubeで公開し、必要な人がいつでもアクセスできるようにしました。

□多様な関係者・支援者に向けて(子育て支援サイトの開設・寄付など支援の呼びかけ)

2016年度にはKIFホームページ内に「外国人住民のための子育て支援サイト」を開設し、子育てに関するKIFおよび関連機関の情報を集約し、随時更新して発信することにしました。また、「外国人住民のための子育てチャート」とDVDは、外国語の母子手帳を販売している株式会社母子保健事業団に、販売委託もしています。

さらに「子育て応援キャンペーン」として、外国人住民の子育てに関心のある企業・団体・個人に向けて、寄付による応援を呼びかけました。医師会や産婦人科・小児科などの医療機関、子育てや外国人支援に関わる企業や機関などからご協力、ご寄付をいただきましたので、今後の子育て支援に関する情報発信などを更に充実させていきたいと考えています。



2016年度から発⾏を開始した
「⼦育てチャート」のシリーズ

外国⼈住⺠のための⼦育て⽀援サイト


●行政・外国人支援関係者・外国人コミュニティとの連携促進

情報の受け手である外国人コミュニティの状況を把握し、連携していくことも重要です。KIFでは、県内の外国人コミュニティとのつながりを大事にし、「外国人コミュニティとの意見交換会」などを実施し、そのネットワークを活用して、子育て支援事業を進める多くのヒントを得てきました。

また、支援機関や出身国の特徴にあわせて実施事業の開催方法を変える工夫もしています。これまで、病院における外国人(主にベトナム人)妊婦教室、市役所との連携によるムスリム女性向けの栄養・健康ワークショップ、子育て支援拠点におけるネパール出身の親子向けワークショップの3種類のワークショップを行いました。



ベトナム人妊婦教室
(病院と連携)

ネパール人ママ向けワークショップ
(子育て拠点と連携)

ムスリマ女性向けワークショップ
(市役所と連携)
 


●子育て支援関係者への学習機会の提供・支援者間ネットワークの構築

外国につながる家族の増加に伴い、行政や関係機関のスタッフが、業務として外国人住民にかかわる場面が増え、複雑で専門的な支援が必要なケースも少なくありません。しかし、ことばや文化が異なる場合に、どのようにコミュニケーションを取ったらよいのか、外国人特有の課題にどのように関われるのか、など迷っている現場の専門職が多いことも、市区町村調査で明らかになりました。

そこで、母子保健や医療、保育や児童福祉の分野で外国人住民の支援に必要な知識やスキルを学ぶ研修を始めました。市町村の保育士会、医師会、助産師会、県児童相談所、児童養護施設、スクールソーシャルワーカーなど幅広い分野の関係機関と連携し、課題となっていることを研修に盛り込み企画・実施しています。各分野の「専門職」と「多文化」分野の関係者が連携し、外国人住民への子育て支援をよりよいものにしていこうという思いが、少しずつ共有されているという手応えを感じています。これらの事業を継続的に進め、必要に応じて発展させていくために、関係団体とのネットワーク構築が必須となります。

2017年度に(株)明石書店から「外国人の子ども白書」が出版された際、同社と共催で開催したフォーラム「外国につながる子どもたちが希望をもてる社会をめざしてから発達段階に応じた支援を考える~」も、こうした問題意識から開催したものです。乳幼児期から青年期までをつなぐ各地域の事例から学ぶことで、外国につながる子どもが活躍できる社会づくりには何が必要なのか、関係者が集まり議論を行いました。



●ガイドブックの発行

このように実施してきた事業や研修によって得られた知見をまとめ、より多くの人に知ってもらうため、2018年度には「外国人住民の妊娠から子育てを支えるガイドブック」を作成しました。産婦人科・小児科や母子保健・子育て支援を担当する行政機関、地域の支援者などを対象に、外国人住民に対応するためのヒントを、「言語」「文化」「情報」「連携」の4つのテーマで整理しました。前述した3つのワークショップの企画や実施のプロセスを紹介し、神奈川県以外のどこの地域でも活用して頂き、それぞれの取り組みが進められるよう提案しています。今後は、このガイドブックを活用した研修を実施していく予定で、連携してくださる機関を公募しています。



⽀援者向けガイドブック
(画像をクリックすると立ち読み版のページが開きます)


●子育て支援事業のひろがり

KIFは2016年度から神奈川県の委託事業として「多言語支援センターかながわ」の運営を担い、2019年3月時点で5言語(英語、中国語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語)での情報提供に応じています。この事業は、医療機関や公的機関への通訳派遣事業を行うMICかながわ(多言語社会リソースかながわ)と共同で運営しており、「医療」と「子育て」に関する問い合わせが最も多く寄せられています。出産や子育てに関する外国人当事者からの問い合わせに加え、外国人との接点が多い支援者からの連絡も多くあります。

2019年4月より「出入国管理及び難民認定法」(入管法)が改正・施行されました。既に定住している外国人住民に加え、新たにかながわに移り住む外国人の増加も見込まれます。日本で生活し、仕事をする彼らの平均年齢は、日本人と比べて若く、結婚・子育て世代の割合が多くなるでしょう。外国人住民の存在は、地域社会の中で今後ますます重要となり、今後一層多くの方々が日本でライフサイクルを重ねていくことになります。

「子育て支援事業」は、そのような時代状況とニーズを反映したもので、今後も継続・発展させていきたいと考えています。



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かながわ国際交流財団(KIF)の、1977年の設立以来40年を振り返る連載は今回で終了します。
関係各機関、団体、協力者の皆さまにこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。


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※注

たとえば愛知県では2006年から、就学前の子どもへの指導を行う「プレスクール」が立ち上がりました。小学校入学前に子どもおよび保護者への支援を行うことで、スムーズな就学が促され、その後の学習や学校生活にプラスの効果があることが分かってきました。神奈川県内でも小学校入学前の説明会やプレスクールを始めるNGO/NPOなどが増え、就学前支援に対するニーズが見えてきたところでした。

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