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福原義春名誉顧問が文化功労者に選ばれました « 公益財団法人 かながわ国際交流財団 KANAGAWA INTERNATIONAL FOUNDATION
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福原義春名誉顧問が文化功労者に選ばれました


福原名誉顧問(左)とフランスの
元文化大臣ジャック・ラング氏

「文化を失うのは、心のよりどころを失うこと」

この度、当財団の福原義春名誉顧問が2018年の文化功労者に選ばれました。福原氏が理事長(在任期間1999年10月~2015年6月)として財団事業に尽力されたご功績を2つの事業を通してご紹介します。



◆21世紀ミュージアム・サミット~心のよりどころとしての文化~

福原氏は、企業の社会貢献活動として、文化芸術への支援に取り組み、1990年、企業メセナ協議会の創設に尽力し同理事長としてメセナ活動を牽引し続けてこられました。また、2000年には東京都写真美術館の館長に就任し、ビジョンを掲げ館員のモチベーションを高めて入館者数を飛躍的に増やすなどの実績を上げてこられました。

こうした実践も通して、文化芸術を支援する企業や美術館のあり方を追い求め、その試みの一つとして、当財団が主催者となり2004年から隔年開催で「21世紀ミュージアム・サミット」を始めました。当時は、自治体の財政難に加え、指定管理者制度の導入などにより、多くの美術館で予算や人員が削られ「美術館・冬の時代」と言われていました。そうした中で、文化装置であるミュージアムをいかに機能させていくことができるのか、様々なステークホルダーが一堂に会して議論するために企画されたものです。

企画運営委員に、⽇本を代表する美術史家の⾼階秀爾氏、アメリカ・カナダの著名な美術館の東洋部⻑等の要職を経て⾦沢21世紀美術館⻑であった蓑豊氏、横浜トリエンナーレ2001のアーティスティック・ディレクターを経て、国⽴国際美術館⻑であった建畠晢氏など、福原氏からのお声掛けがなければお願いできない、著名な美術・評論家をお迎えし、第1回「文化の継承と創造」、第2回「21世紀、美術館は生き残れるか」などのテーマを掲げ、議論を展開してきました。

特に第4回以降は「地域」をキーワードとして、地域社会におけるミュージアムの役割を主な論点とするとともに、美術館の館⻑・学芸員と⼀般の参加者がフラットに語り合うワールド・カフェ形式としました。第5回は、東日本大震災から一年後の2012年2月に開催され、博物館・図書館・⽂書館等館種を超えて、社会とかかわるミュージアムのあり⽅について広く、深い議論が行われました。

第6回においては、フランスの元⽂化⼤⾂であり、福原名誉顧問の長年の友人であるジャック・ラング⽒を招きました。ルーヴル美術館⼤改⾰をテーマに講演いただき、「国の⽂化政策」にも視野を広げた議論を展開しました。ラング氏の「文化への投資は何百倍にもなって返ってくる」という確信に満ちた言葉は、日本の文化政策の針路を指し示しているようでした。


ミュージアム・サミットにおいて
対話する福原名誉顧問(左)と
ジャック・ラング氏

※ミュージアム・サミットは、2016年の第7回「まちとミュージアムが織りなす文化―過去から未来へ―」をもって一応の区切りとし、現在はこのテーマを引き継ぎ、県内の美術館と共同のアートプロジェクトMULPA(マルパ)に取り組んでいます。MULPAとはMuseum UnLearning Program for Allの頭文字を取った略称で、日本語では「みんなで“まなびほぐす”美術館―社会を包む教育普及事業―」であり、定住外国人や障がいを持つ人たちを含め「すべての地域住民」を対象に美術館における社会包摂の取組みを進めることを目的としています。



◆21世紀かながわ円卓会議~生活様式としての文化~

福原氏が1987年に資生堂の社長に就任した際に、企業文化を生かすことが、次の時代の資本となると考え、文化を管理する部門として社内に「企業文化部」を設置しました。そして1999年には新しいモノをつくり、コトを起こす創造性に通じるものとして「文化資本」という言葉を提唱しました。継承されてきた文化資本を、地域活動など市民生活を通じて獲得した文化性と重ね合わせ、次世代の価値創造を試みる社員の人間力にある、とのお考えからでした。

また、84年にジャック・ラング氏の提唱で始まった「日仏文化サミット」における交流により、グローバル化が進むと国や地域の固有の文化が混合し、やがては均質化されていく懸念を持ち、都市ごとに独自の文化芸術と産業が結びついた、欧州における「創造都市」に関心を深めていかれました。

2001年から開催された「21世紀かながわ円卓会議」(以下、円卓会議)の大きな問題意識は、このような、文化の均質化が進むというグローバル化の負の側面に目を向けていくことでした。ミュージアム・サミットと同様、多様な立場の人たちが対話をする形式で進められていますが、長年にわたりこの対話の推進役であるモデレーターを務められた神野直彦氏(東京大学名誉教授)も福原氏のご紹介でした。
その他、多くの研究者・実務家に議論に加わっていただきました。今回、文化功労者に選ばれた、東日本大震災の被災地を含め日本各地でプロジェクトを展開している建築家の伊東豊雄氏や、地域資源を活かしたアートプロジェクトの領域で活躍するアートディレクターの北川フラム氏にも講演いただいたことがあります。

福原氏は、国民一人ひとりが「公」を担う自覚を持ち、豊かな市民社会を実現させていくことが必要であると考えておられ、円卓会議のプログラムでも、講師が⼀⽅的に話をするだけではなく、その場に集った⾏政・NPO・市⺠等が実践事例を提⽰し、共有しながら、よりよい社会を⽬指す知恵を相互に模索する対話が進められたのです。


2012年度円卓会議にて、参加者の
対話を見守る福原名誉顧問(手前右)。
その後方には神野直彦氏。

円卓会議では、これまでの歴史の中で築き上げられてきた固有の価値も踏まえつつ、地球環境問題・経済格差などの世界的な課題への対応を見据えた社会のあり方を、一人ひとりが考え、行動する姿を追い求めています。

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